『市場サイクルを極める(ハワード・マークス著、日本経済新聞出版社、2018)』を再度、読み込んだ。
名著中の名著で、何度も目を通しているが、改めて購入し、再読。
やはり、何度読んでも学びが深い。
私は、あらゆる投資手法やテクニック、経済予測なるものは信じない。
が、唯一、信じるものがあるとすれば?
「市場サイクル」である。
なぜ、市場サイクルなるものがあるか?
というと、誤解を恐れずシンプルに言えば「人間は感情の生き物」だからである。
怖い動物に遭遇したら恐れるし、好きな人に振り向いてもらえたら嬉しい、収入がなくなったら不安だし、嫌なことされたら腹立たしい。
それは、人間誰しもが持つ感情である。
人類が生き延びるためには必要なものであったが、これが「投資」となると、時に邪魔をすることがある。
例えば、暴落して割安の時に、本当は勇気をもって買い向かうべきだが、「恐れ」や「不安」から行動に移せなくなってしまう。
また、本当はこれからももっともっと伸びそうな株を買っていても、ついついビビッて「利確」してしまったり。
あるいは、本当は買うべきタイミングではないのに、「みんなが買っているから」という理由で、乗り遅れまいという「焦り」で高値で買ってしまったり。
とかく、人間の感情は、投資において不利に働くことが多い。
だから、著者のハワードマークスによると、どれだけ金融理論やシステムが発達しようが、人間がやる以上、こういった感情による「サイクル」が起きるということ。
本書を読んでおけば、市場サイクルの基本が身につく。これが、投資成績の向上に大いに役に立つことは疑いようがない。
また、市場サイクルが発生する要因をあえてもう一つ挙げるとしたら、「政府の干渉」によるところも大きい。
例えば、景気が悪くなれば、市中のお金を増やし、活性化させたい。だから、金利を下げる。
金利を下げると、企業はお金を借りやすくなる。借りやすくなれば、そのお金で積極的な設備投資や人材雇用などをする。結果、景気が良くなってくる。
すると、今度は供給よりも需要が増え始め、供給不足や資源高により物価高に悩まされる。そこで、政府は市中のお金を回収するために、金利を上げる。そうすると、物価は抑えられるかもしれないが、企業の利益が減り、不景気になりはじめる。このようなサイクルが起きやすいのも、政府が干渉するからである。
本書は、以上のような、ハワードマークスによる「市場サイクル」に関する理論を学べる貴重な一冊となっている。
ハワードマークスの「経験」や「実務」に基づく主張なので、説得力があり、投資実務に携わる者にとって深い洞察が得られる書である。
目次
- 第一章 なぜサイクルを研究するのか?
- 第二章 サイクルの性質
- 第三章 サイクルの規則性
- 第四章 景気サイクル
- 第五章 景気サイクルへの政府の干渉
- 第六章 企業利益サイクル
- 第七章 投資家心理の振り子
- 第八章 リスクに対する姿勢のサイクル
- 第九章 信用サイクル
- 第十章 ディストレスト・デッドのサイクル
- 第十一章 不動産サイクル
- 第十二章 すべての要素をひとまとめに/市場サイクル
- 第十三章 市場サイクルにどう対処するか
- 第十四章 サイクル・ポジショニング
- 第十五章 対処できることの限界
- 第十六章 成功のサイクル
- 第十七章 サイクルの未来
- 第十八章 サイクルの本質
対象者
中上級者向けだと思います。
購入方法
Amazonから購入できます。
『市場サイクルを極める(ハワード・マークス著、日本経済新聞出版社、2018)』