先日、木原直哉さんとエミン・ユルマズさんが対談本『「確率思考」で市場を制する最強の投資術(KADOKAWA、2024)』を出した。
読んでみて、あらためて「確率思考って大事だな」と実感。
なので、僕が何度も何度も何度も読んで勉強になっている木原直哉さんの名著『東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考(木原直哉著、中経出版、2013)』を再読してみた。
やはり、どれだけ読んでも読み足りないほどの名著だなと。
投資もビジネスも、そして、人生においても「確率思考」は重要だ。
確率思考が上達すれば、投資やビジネスでの「意思決定」の質も良くなる。と同時に人生全般においても。
また、メンタル的にも確率思考ができると安定しやすい。
例えば、失敗をした時に、単体で観ると失敗かもしれない。が、長期で観ればそれは「成功の一部の試行」である場合が往々にしてあるからだ。
逆に、成功した時もそれは実力通りの成果ではなく、「たまたま」や「運」である場合もある。そう分かっていれば驕ったり傲慢になることを防ぐことに役立つだろう。
そういった長い目で見た「成功」や「失敗」を考えられるようになるのも「確率思考」ができることのメリットである。
もう少し具体的なお話をしたい。
例えば、僕は株式投資で資産形成をしている。主な手法は長期バリュー投資に区分される。
その場合、実力ある企業を買っても、短期的には実力通りの株価にならないことがある。
そういえば、ちょうど先日、プロ野球クライマックスシリーズ(CS)で2024年セリーグ優勝した読売ジャイアンツが、3位の横浜ベイスターズに敗退するという現象があった。
これなんぞも本来の実力からすれば読売ジャイアンツが勝ってしかるべきだが、短期決戦ではそうもいかないのが確率ゲームの最たる野球の面白いところでもある。
結果、成績的には圧倒的格下であるはずの横浜ベイスターズが勝ち、日本シリーズに進むことになってしまった。(読売ジャイアンツのファンはたまったものではないだろう・・・)
まさにこれも確率的に「たまたま」実力通りの結果が短期的には出なかったケースであろう(横浜ファンの方すいません)。
で、これは株式投資でも同様で、短期的には実力通りの株価にならない場合がある。その場合、「確率思考」ができる人なら「たまたま」と割り切って待つことができる。
が、「確率思考」ができない人は「うわ!株価が下がった!企業が悪くなったんだな?いち早く売らなきゃ!」などと思って、手放してしまうだろう。
逆もいえる。株価は高くなっているのに、本来の実力が下がったとする。「確率思考」ができる人ならこの成功は「たまたま」と判断し、売ることができるだろう。
しかし、「確率思考」ができない人はこの「たまたま」の結果を実力と誤読し、持ち続けてしまうだろう。後に、実力通りしっかり株価が下がってきたら「なんでだよ!世間はわかってない!」などと思って、塩漬けにしたりしてしまうのだ。
このように「確率思考」ができるかどうかで意思決定の質は大きく変わってくる。
本書は、そういった「確率思考」ができるようになる良書だ。
ありがたいことにポーカーで日本人初の世界チャンピオンになった木原直哉さんが、ポーカーの意思決定を通じて「確率思考」を解説してくれている。
実践に裏打ちされた文章は説得力もあり、読んでいて腑に落ちやすい。論理的にも整合性がある。
多くの確率思考解説書は世の中にあるだろうが、こうした「実践」に基づいた確率思考を解説した書は稀有。現役トップポーカープレイヤーの、しかも日本人による解説書が出たことに、僕たちはリスペクトとともに大いに感謝すべきだろう。ありがたい。
『東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考(木原直哉著、中経出版、2013)』